ゲノム創薬の新時代到来!

2017年8月30日、Kymriah(キムリア)が米国食品医薬品局(FDA)から正式承認されました。
個別医療(ゲノム創薬)の新時代の到来です。

Kymriah(キムリア)は、ノバルティスファーマ株式会社の海外における製品名でCTL019と呼ばれる患者さん自身のT細胞の単回投与により行うがん治療法です。
難治性または2回以上の再発を認めるB細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の25歳以下の患者さんを対象とする初めてのキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)医療です。
米国食品医薬品局(FDA)は、このKymriah(キムリア)の静脈注入用懸濁液を承認したことを発表しました。
FDAが初めて承認する遺伝子導入に基づく治療法だとプレスリリースされました。

米国では、「初の遺伝子療法」と呼ばれているようです。
キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)とは、キメラ抗原受容体(CAR)を用いた遺伝子改変T細胞療法です。
実際の進め方は、まず患者から血液を採取し、そのT細胞に遺伝子改変を加え(=CARの実装)、その遺伝子改変T細胞を患者の体内に戻すというものです。

Kymriah(キムリア)の価格は47万5,000ドル、約5,335万円と非常に高額ですが、アナリストの予想を下回ったとのことです。

がん免疫薬「オブジーボ」は当初1ヵ月300万円(1年で3,600万円)でした。これを継続的に投与しなければなりません。

一度の投与で治療される、Kymriah(キムリア)のこの価格を、皆様はどの様に考えるでしょうか?

キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)の開発には、すでに多くの企業が参入しており、日本においても、第一三共が今年1月に「Kite社とのがん領域細胞治療薬パイプラインに関する包括提携」をプレスリリースしています。

ちなみに、この包括提携の元で開発するKTE-C19は、CD19と呼ばれる悪性リンパ腫細胞の表面に発現している抗原を標的とする細胞治療薬(キメラ抗原受容体T細胞:CAR-T)で、静脈内投与により再発性または難治性の悪性リンパ腫に対する治療効果が期待されています。

悪性腫瘍細胞を攻撃する代表的なものとしては、NK(ナチュラルキラー)細胞、Tリンパ球(細胞障害性T細胞)、樹状細胞等があります。
蛇足ながら、昨今、一部の人々による臍帯血の問題等が世間を騒がせていますが、それによってすべての免疫療法が間違いという風潮にはあまり賛成できません。

患者から血液を採取し、培養または改変し、それを患者に再び戻すという治療がたくさんの人々を治癒へと導く時代がくることを信じたいものです。
当社が提供するトータルソリューションシステム「Carly」を導入し、正しい手順の踏襲と問題発見後の原因分析にご活用頂きたいです。

見える化・分かる化を実現します。

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遺伝子検査会社の役割と期待

御存知のように、遺伝子検査会社の役割は昨今非常に大きなものとなっています。

アメリカの人気女優が遺伝子検査の結果を受けてがん予防のために健康な乳房等を切除したというニュースが世界中の注目を浴びたのは2013年のことでした。
切除はしないにしても、遺伝的なリスクが判明すれば、早い段階から習慣の改善を意識するようにはなるというのが世間でも認識されているのではないでしょうか。

オバマ政権では、2015年、パーソナルゲノム医療を目指して100万人以上の米国人のゲノム(DNAのすべての遺伝情報)を集めると発表して衝撃を与えました。
国をあげて「ゲノム医療」を推進し、その枠組み作りにも取り組んでいたのです。「プレシジョン・メディシン(Precision Medicine)」という新しい考え方を紹介したのも同じころです。

「プレシジョン・メディシン(Precision Medicine)」とは、精密医療や高精度医療、個別化医療等と訳されていますが、遺伝子情報や、環境要因・ライフスタイルなども含めた情報を基に、個人を「病気のかかりやすさ」で詳細なサブグループに分け、そのサブグループごとに適切な予防や治療を目指していくという考え方の医療です。
この分野では、米国が一歩も二歩も抜きん出ています。

日本においても「ゲノム医療実現推進協議会」や「次世代医療ICT基盤協議会」での議論が始まっており、ゲノム解析は研究から実利用に向けた段階へと進んでいます。
ただ、米国では糖尿病等の生活習慣病にまで広範囲にカバーしているのに対し、日本のゲノム医療は、現在はがんや希少疾病、難病にフォーカスされている点に、米国との若干の違いを感じます。

いずれにしても、遺伝子検査会社の役割は日に日に重要なものとなっています。
2017年8月14日2017年8月28日のブログでも触れましたが、国をあげて遺伝子検査の品質を確保していこうという動きは確かにあります。
しかし一方、遺伝子関連検査には多種多様なものが存在するため、どの程度の施設に法の網をかけるかについてはまだまだ曖昧です。

本年に入って飛び込んだニュースに、白血病関連遺伝子検査の値が病院検査と異なるということから大問題となり、その受託機関では半年ほど検査受託を中止して検証及び過去データの見直しを行うというものがありました。
第三者評価委員会によって「検査結果の低値化は認められず、過去の報告結果が患者の継続的な診療に及ぼす影響は無いと考えられることから、十分な検査工程の点検および利用者の理解を図った上で再開されるべき」と結論付けられ、すでに検査受託は再開されています。
患者への影響は無いという結論に安心はしましたが、そもそもニュースになるほど病院検査と値が異なるということについて、必ずその原因はあり得ます。
同じ目的の検査においても、実施する機関において、検査手順、検査環境、検査キット、保存環境等、何かが異なる箇所があるはずです。

「認定された」どの遺伝子検査機関においても結果が同じとなる、私たちは、そういう状況になる様にシステム導入を通じて医療に従事する皆様を支援いたします。

「再生医療の市場規模」について

経済産業省が2013年に「再生医療の実用化・産業化に関する研究会」で取りまとめた最終報告書に発表した再生医療の市場規模予測の図です。

再生医療市場規模予測
図1 出所) 経済産業省 NewsRelease 平成25年2月22日

この最終報告書において、2020年には、製造・加工品と周辺産業を合計すると、国内の再生医療の市場規模は1900億円、世界の再生医療の市場規模は2兆円と試算されています。
2012年の数値がそれぞれ280億円、3400億円であることを鑑みると6-7倍の伸びが予測されていました。

図1では、2012年、2020年、2030年、2050年の世界市場の予測値が記されています。
日本市場の数字を同じようにみると、再生医療の市場規模は、90億円→950億円→1.0兆円→2.5兆円、再生医療周辺産業については、170億円→950億円→5500兆円→1.3兆円と予測されています。

再生医療市場予測‗三菱総研資料
図2 出所) 株式会社三菱総合研究所 2015年3月31日 資料 *1)

図2は、市場の推移と予測です。

2020年以降の上昇率の違いはあれ、同じようなカーブを描いています。

上昇を支えるための策として、様々な提言がなされています。
前述の経済産業省の最終報告書でも、「今後の課題」として下記の6点が挙げられていました。

– 再生医療の治療の特徴に対する理解の促進
– 細胞加工機関に求められる基準とモデル契約書の作成
– 再生医療の審査手続きの合理化・透明化
– 再生医療の実用化のための技術開発
– 市場拡大に向けた業界団体の取り組みの活性化
– 再生医療の特性に適したリスク・費用負担の整備

また、国としても、省庁の枠を超えた取り組みを行おうとしています。

再生医療の実現化ハイウエイ構想
図3 出所) 平成27年度 医療分野の研究開発関連予算のポイント

倫理上の問題や手続きの整備等はもちろんですが、細胞ごとの培養法の確立と標準化、競争力ある消耗品(試薬、培地等)の開発と標準化が再生医療市場の拡大を後押しすることは確実だと思います。

「日本品質」を発揮することが、再生医療の市場規模と世界における日本のシェア拡大への王道ではないでしょうか。
世界基準を作る主導権を日本が勝ち取れたらいいですね。

 



*1)
株式会社三菱総合研究所 2015年3月31日 平成 26 年度「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業(再生医療等の産業化に向けた評価手法等の開発)」(原料細胞の入手等に関する調査等)報告書

治験における検体管理の重要性

治験は、製薬企業主導でしか行えませんでしたが、2003年の法改正により、医師主導でも行うことが可能になりました。

しかしながら、日本における治験実施体制が、新しい医薬品臨床試験実施基準に対応するレベルになっておらず、治験の実施数が減ってしまいました。
また、体制の整っている欧米で先行して治験を行う企業が増えて来ています。このことから、日本の治験は先進諸外国と比較して「遅れている」と言われてきました。
そこで、今、日本では、国をあげてこの治験の空洞化に対処しようとしています。 *1)

治験は、開始前、実施中、及び終了後のタイミングでそれぞれ必要な工程がいくつもあります。

臨床研究の流れ

実施中の新薬投与開始から終了までの間において、検体の管理がとても重要です。

治験における検体検査は、院内体制が整っている場合でも、治験という目的の性格上、測定機器や試薬等の違いによる測定結果のぶれを防ぐため外部の検査機関に送付する場合が多いです。

院内であっても、外部の検査機関であっても、検体検査を実施する機関では治験台帳として採血日、被験者名、治験名、測定期間、採血時間等必要条項を記録するとともに輸送時の環境、採血から遠心までの時間等、定められた検体処理手順の遵守が必須です。

この「検体処理手順」の遵守が正しく行われたことの証跡を、信頼できる方法で記録するためには、システムの利用が必要不可欠なのです。

比較的大きいといわれる検査機関でさえ、紙のマニュアルを使用し、人間がラベルに書き込み、インキュベータの温度管理を信頼し、使用する試薬を目視で選んでいるところが多いのが現状ではないでしょうか?

いくらプロフェッショナルとはいえ、人間であれば間違いは起こりえます。

システムを導入しアラート検知する仕組みがない状況において、手順や判断の誤りに気が付かず、無意識のうちに間違いが起こっているのです。

私たちの未来を救うための新薬をつくるための治験において、意識されないこのひとつのほころびが、不完全な新薬へとつながります。

弊社は、治験の空洞化の解消に貢献すべく、システム導入を通じて検査機関における検体管理を強化し、ミスの無い安心・安全を提供します。
 



*1)
臨床研究・治験活性化5か年計画 2012 アクションプラン(文部科学省・厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/dl/121025_3.pdf

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コンタミを防ぐ!

「コンタミネーション(英語:contamination)」、本来は「汚染」一般を意味する英単語ですが、製造工程においては「異物混入」、周囲の環境と実験環境を厳密に区分けする必要がある科学実験の場では「実験室汚染」と訳されることが多いです。

現場では「コンタミ」という用語が一般化しています。

薬品製造の場にかかわらず、「コンタミ」による問題がニュースとなることも多いです。 ガソリンと灯油、食品への異物混入等は耳にしたことがある方も多いでしょう。 細胞培養の場においても、「コンタミ」は最も一般的な問題であると同時に、非常に深刻な結果を引き起こす問題でもあります。

細胞を培養する場合、通常は他の生物の混入がない培地を使用して培養が行われます。 この純粋培養を行うためには、使用機材、培養器具、培地等すべての材料をあらかじめ滅菌処理をするとともに、無菌環境で培養を行うことで、実験中に空気や実験者、器具等から雑菌が混入しないように対策を講じています。
また、使用する水からの雑菌混入を防ぐために、できるだけ純度の高い純水を使用しています。

閉ざされた空間であるクリーンルーム(無菌室)では、紙から発生する塵埃もコンタミの原因となりえます。 ですから、清浄度の高いクリーンルームにおいてはペンや紙の持ち込みは避けたいものです。
やむを得ず持ち込む場合のために、防塵紙(クリーンペーパー)や、クリーンルームペン等のクリーンルーム筆記具が市販されています。

作業予定の確認や作業の記録は、専用の筆記具を使わなくともタブレットを使うことで、紙やペンから発生する塵埃の危険をなくします。

PCでは駄目なのか?とお考えの方がいると思います。

スイッチやコンセント、ファン等も塵埃によるコンタミの原因となるため、持ち込むと危険だというのが現場からの意見です。
その点、タブレットはあらかじめ充電しておくことで、クリーンルーム内で電源ケーブルの必要はありません。しかもファンレスなので安心です。

Carlyを導入すれば、バーコードリーダー、タブレット、タブレットペンを使用して、これらの問題を一気に解決することができます。
今後も、音声認識やウエアラブルな方法を含め実験者が、安心、安全、スマートに製造工程が記録できるよう目指します。

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