「再生医療の市場規模」について

経済産業省が2013年に「再生医療の実用化・産業化に関する研究会」で取りまとめた最終報告書に発表した再生医療の市場規模予測の図です。

再生医療市場規模予測
図1 出所) 経済産業省 NewsRelease 平成25年2月22日

この最終報告書において、2020年には、製造・加工品と周辺産業を合計すると、国内の再生医療の市場規模は1900億円、世界の再生医療の市場規模は2兆円と試算されています。
2012年の数値がそれぞれ280億円、3400億円であることを鑑みると6-7倍の伸びが予測されていました。

図1では、2012年、2020年、2030年、2050年の世界市場の予測値が記されています。
日本市場の数字を同じようにみると、再生医療の市場規模は、90億円→950億円→1.0兆円→2.5兆円、再生医療周辺産業については、170億円→950億円→5500兆円→1.3兆円と予測されています。

再生医療市場予測‗三菱総研資料
図2 出所) 株式会社三菱総合研究所 2015年3月31日 資料 *1)

図2は、市場の推移と予測です。

2020年以降の上昇率の違いはあれ、同じようなカーブを描いています。

上昇を支えるための策として、様々な提言がなされています。
前述の経済産業省の最終報告書でも、「今後の課題」として下記の6点が挙げられていました。

– 再生医療の治療の特徴に対する理解の促進
– 細胞加工機関に求められる基準とモデル契約書の作成
– 再生医療の審査手続きの合理化・透明化
– 再生医療の実用化のための技術開発
– 市場拡大に向けた業界団体の取り組みの活性化
– 再生医療の特性に適したリスク・費用負担の整備

また、国としても、省庁の枠を超えた取り組みを行おうとしています。

再生医療の実現化ハイウエイ構想
図3 出所) 平成27年度 医療分野の研究開発関連予算のポイント

倫理上の問題や手続きの整備等はもちろんですが、細胞ごとの培養法の確立と標準化、競争力ある消耗品(試薬、培地等)の開発と標準化が再生医療市場の拡大を後押しすることは確実だと思います。

「日本品質」を発揮することが、再生医療の市場規模と世界における日本のシェア拡大への王道ではないでしょうか。
世界基準を作る主導権を日本が勝ち取れたらいいですね。

 



*1)
株式会社三菱総合研究所 2015年3月31日 平成 26 年度「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業(再生医療等の産業化に向けた評価手法等の開発)」(原料細胞の入手等に関する調査等)報告書

治験における検体管理の重要性

治験は、製薬企業主導でしか行えませんでしたが、2003年の法改正により、医師主導でも行うことが可能になりました。

しかしながら、日本における治験実施体制が、新しい医薬品臨床試験実施基準に対応するレベルになっておらず、治験の実施数が減ってしまいました。
また、体制の整っている欧米で先行して治験を行う企業が増えて来ています。このことから、日本の治験は先進諸外国と比較して「遅れている」と言われてきました。
そこで、今、日本では、国をあげてこの治験の空洞化に対処しようとしています。 *1)

治験は、開始前、実施中、及び終了後のタイミングでそれぞれ必要な工程がいくつもあります。

臨床研究の流れ

実施中の新薬投与開始から終了までの間において、検体の管理がとても重要です。

治験における検体検査は、院内体制が整っている場合でも、治験という目的の性格上、測定機器や試薬等の違いによる測定結果のぶれを防ぐため外部の検査機関に送付する場合が多いです。

院内であっても、外部の検査機関であっても、検体検査を実施する機関では治験台帳として採血日、被験者名、治験名、測定期間、採血時間等必要条項を記録するとともに輸送時の環境、採血から遠心までの時間等、定められた検体処理手順の遵守が必須です。

この「検体処理手順」の遵守が正しく行われたことの証跡を、信頼できる方法で記録するためには、システムの利用が必要不可欠なのです。

比較的大きいといわれる検査機関でさえ、紙のマニュアルを使用し、人間がラベルに書き込み、インキュベータの温度管理を信頼し、使用する試薬を目視で選んでいるところが多いのが現状ではないでしょうか?

いくらプロフェッショナルとはいえ、人間であれば間違いは起こりえます。

システムを導入しアラート検知する仕組みがない状況において、手順や判断の誤りに気が付かず、無意識のうちに間違いが起こっているのです。

私たちの未来を救うための新薬をつくるための治験において、意識されないこのひとつのほころびが、不完全な新薬へとつながります。

弊社は、治験の空洞化の解消に貢献すべく、システム導入を通じて検査機関における検体管理を強化し、ミスの無い安心・安全を提供します。
 



*1)
臨床研究・治験活性化5か年計画 2012 アクションプラン(文部科学省・厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/dl/121025_3.pdf

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コンタミを防ぐ!

「コンタミネーション(英語:contamination)」、本来は「汚染」一般を意味する英単語ですが、製造工程においては「異物混入」、周囲の環境と実験環境を厳密に区分けする必要がある科学実験の場では「実験室汚染」と訳されることが多いです。

現場では「コンタミ」という用語が一般化しています。

薬品製造の場にかかわらず、「コンタミ」による問題がニュースとなることも多いです。 ガソリンと灯油、食品への異物混入等は耳にしたことがある方も多いでしょう。 細胞培養の場においても、「コンタミ」は最も一般的な問題であると同時に、非常に深刻な結果を引き起こす問題でもあります。

細胞を培養する場合、通常は他の生物の混入がない培地を使用して培養が行われます。 この純粋培養を行うためには、使用機材、培養器具、培地等すべての材料をあらかじめ滅菌処理をするとともに、無菌環境で培養を行うことで、実験中に空気や実験者、器具等から雑菌が混入しないように対策を講じています。
また、使用する水からの雑菌混入を防ぐために、できるだけ純度の高い純水を使用しています。

閉ざされた空間であるクリーンルーム(無菌室)では、紙から発生する塵埃もコンタミの原因となりえます。 ですから、清浄度の高いクリーンルームにおいてはペンや紙の持ち込みは避けたいものです。
やむを得ず持ち込む場合のために、防塵紙(クリーンペーパー)や、クリーンルームペン等のクリーンルーム筆記具が市販されています。

作業予定の確認や作業の記録は、専用の筆記具を使わなくともタブレットを使うことで、紙やペンから発生する塵埃の危険をなくします。

PCでは駄目なのか?とお考えの方がいると思います。

スイッチやコンセント、ファン等も塵埃によるコンタミの原因となるため、持ち込むと危険だというのが現場からの意見です。
その点、タブレットはあらかじめ充電しておくことで、クリーンルーム内で電源ケーブルの必要はありません。しかもファンレスなので安心です。

Carlyを導入すれば、バーコードリーダー、タブレット、タブレットペンを使用して、これらの問題を一気に解決することができます。
今後も、音声認識やウエアラブルな方法を含め実験者が、安心、安全、スマートに製造工程が記録できるよう目指します。

詳しくはこちら

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逸脱管理とは?

「逸脱」という言葉は、製薬において大きな意味を持ちます。
日本におけるガイドラインGMP省令 *1)で、”逸脱管理が医薬品の製造に必須である”とされているからです。

「逸脱管理」を話題にする前に「逸脱」という言葉の定義が必要です。

GMP省令を確認したところ「逸脱の管理」の定義 *2) はされているのですが、肝心の「逸脱」という言葉の定義はされていません。

そこで、国際的なガイドラインのICH Q7 *3) を見たところ「承認された指示または設定された基準からの乖離」と定義されておりました。

本文も、このICH Q7の通り「逸脱」とは「承認された指示または設定された基準からの乖離」と定義いたします。

逸脱管理、是正管理、予防管理。
これらの言葉は、同じような局面でよく使われます。

平たく言えば、免疫細胞を培養しているようなケースにおいて、予測通りの結果が得られなかったとき、その原因を突き止め、手順に漏れまたは問題がある場合、その手順を見直して、以後同じような状況に陥らないように予防策をとらなければならないということです。

これは、もちろん、遺伝子検査、検体検査等、同様のあらゆる場合にも当てはまります。

弊社が提供するソフトウェア「Carly」では、プロトコールとしてあらかじめ決められた標準作業手順(SOP)と、期待する結果(培養した細胞数など)を登録します。
各作業者は、このプロトコールの通りに自動作成される製造指図書に従って作業を進めます。

この製造指図書は、正に「承認された指示または設定された基準」なのです。

手順ごとの作業時間の標準作業時間との比較リストや、製造指図記録書を見れば、使った試薬の量の違い、結果培養できた細胞数の違いを確認することができるので「承認された指示または設定された基準」との乖離が一目瞭然です。

また、各保管庫に設置されている温度計、湿度計をはじめ環境モニタリングシステムとも連携しており、問題が起きた手順の時間帯に、温度や湿度、流量等がどうであったか?をその場で確認できます。

つまり、「承認された指示または設定された基準からの乖離」及びその原因が知らず知らずのうちに記録されており、それを確認する仕組みが備わっているのです。

そして専門部署による確認の結果、手順や使用量、期待する結果等に変更が必要と判断された場合、プロトコールにそれを反映することで「承認された指示または設定された基準」を変更します。

以後、同様の逸脱が発生しない様に予防するのです。

Carlyを導入すれば、逸脱管理、是正管理、予防管理が実現できるのです。

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*1)
GMP省令:12年ぶりに大幅に改正される見込みとなっています。
(最大のポイントは品質マネジメントシステムの導入といわれています。)

*2)
<参考:GMP省令より抜粋>
「第15条 逸脱の管理」製造業者等は製造手順等からの逸脱が生じた場合においては、あらかじめ指定した者に手順書等に基づき、①逸脱の内容を記録すること ②重大な逸脱が生じた場合においては逸脱による製品品質への影響を評価し所要の措置を採ること、またその評価の結果および措置の記録を作成し保管すること、さらに品質部門に対して文書により報告するとともに品質部門がそれを確認すること ③品質部門は確認した記録を作成保管するとともに製造管理者に適切に報告すること

*3)
ICH(医薬品規制調和国際会議)ガイドライン:Quality(品質に関するガイドライン)

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