今、免疫療法を考える

国立がんセンターのWebサイトで、「免疫療法 まず、知っておきたいこと」が紹介されています。

私たちの体は、免疫によってがん細胞を排除しているのですが、免疫が弱かったり、がん細胞が免疫にブレーキを掛けたりすることにより、がん細胞を異物として排除しきれないことがあります。
私たちの体は、免疫によってがん細胞を排除しているのですが、免疫が弱かったり、がん細胞が免疫にブレーキを掛けたりすることにより、がん細胞を異物として排除しきれないことがあります。
免疫療法は、免疫本来の力を回復させることによってがんを治療する方法で、近年注目されており、研究が進められています。
これまでの研究では、残念ながらほとんどの免疫療法では有効性(治療効果)が認められていません。現在、臨床での研究で効果が明らかにされている免疫療法は、「がん細胞が免疫にブレーキをかける」仕組みに働きかける免疫チェックポイント阻害剤などの一部の薬に限られ、治療効果が認められるがんの種類も今はまだ限られています。
「免疫療法(広義)」は発展途上の治療法で、有効性(治療効果)が科学的に証明されていない免疫療法も多数あります。効果が明らかになっていない治療法は、保険診療として認められていないことから、患者が全額治療費を支払う自由診療として行っている医療施設もあります。
患者さんやご家族が、標準治療が使えなくなるなど治療の選択に困り、自由診療でのがん免疫療法(広義)を選択肢として考えるときには、その選択をする前に公的制度に基づく臨床試験、治験などの研究段階の医療を熟知した医師にセカンドオピニオンを求めることをお勧めします。

日本再生医療学会のWebサイトでも、「日本再生医療学会より、国民の皆様へのお知らせとお願い」で、以下のように注意を喚起しています。

下記のよう場合には、勧められても安易に受けることはせず、事前に適法性と安全性・有効性を十分に確認することをお願いいたします。

1 さい帯血※や脂肪細胞のように、他人から採取した細胞を移植する行為

1 日本再生医療学会の認定医が勤務していない機関での細胞を移植する行為

1 その他、安全性確保法に基づいて実施していることが確認できない行為

これらの注意喚起は、安全確保がされている免疫療法かどうかに対するものであり、免疫療法そのものに対する疑義ではないということを意識していただきたいです。

そして、適切な免疫療法を安心して選択できるように、セカンドオピニオンを得られ医師の紹介も含め、正確な情報を患者さんやご家族が得られる「仕組み」が必要だと思います。

研究が進むにつれ、安全性も高く有効な治療法がどんどん増えてきます。対応できるがん種類も拡がってくるでしょう。

海外では、手術、抗がん剤、放射線、に並ぶ、第4の治療法として免疫治療は認識されているところも多いです。

日本でも、第4の治療法として認知されているところに、今年の夏、逆風が吹きました。

厚生省が免疫細胞の無許可加工をしていた加工施設及び医療機関の存在を明らかにしたのです。

このことが世間に与えた影響は非常に大きいです。
正規に許可された加工施設か否かにかかわらず、免疫療法全体に疑いの目が向けられるようになったからです。

「Carlyからお役立ち情報」でも何度か取り上げた「がん治療拠点病院」に対しても、厚生省は全国で434の病院に対して免疫療法の実態調査を行うとしています。
しかし、この「がん治療拠点病院」は、許可も受けており、設備や体制が整っているので問題性は低いのではないでしょうか?

それよりも、設備や体制がそれほど整っていない医療機関で免疫療法を行うところに問題が起こり得えます。むしろ、実態調査は、「がん治療拠点病院」よりも、これらの医療機関に対して行う必要があり、それが有益であるはずです。

また、現在は保険診療の対象外となっている治療法の中にも、今後は保険対象になる治療法もあるでしょう。これらを普及していくためにも、国としての「仕組み」の必要性を感じます。

そして、医療機関の実態調査により「不適切な治療」を明らかにして撲滅し、患者さんやご家族が「正確な情報を得られる仕組み」によって十分に治療法を理解した上で、適切な選択肢を得られる社会が理想です。